アンケートは「作業」か「社会参画」か?─生活者300人調査で判明したリサーチ体験の二極化と、持続可能なリサーチを築く「価値共創体験」の重要性

📊 アンケート体験の二極化:生活者300人調査から見えた実像

近年、リサーチ業界では「回答品質の低下」や「モニターの疲弊」といった課題が顕在化し、持続可能なリサーチのあり方が問われています。多くの対策が「調査票の短縮」や「不正検知」といった負荷軽減や管理強化に重点を置く一方で、「参加したくなる体験とは何か」という視点は十分に検討されていませんでした。

株式会社10(10 Inc.)は、この問題意識に基づき、運営する消費者オンラインコミュニティ「torio café」の参加者289名を対象に、アンケート調査体験に関する意識調査を実施しました。その結果、アンケートを「作業」と捉える層と、「企業・社会とのコミュニケーション」と捉える層の間で、体験評価が大きく二極化していることが明らかになりました。

持続可能なリサーチ

💡 調査結果サマリー:リサーチの持続可能性を左右する要因

(1)一般的な調査アンケートモニターは、長期アンケート履歴者の貢献で成り立っている

調査によると、1年未満の新規モニターはわずか4%でした。これは、現在のアンケートモニターが長期継続者の貢献によって支えられている現状を示しており、「モニター枯渇問題」の一端が浮き彫りとなっています。

モニター継続期間

(2)アンケート協力への意識は「労働」が過半数を占める

モニターの参加動機で最も大きかったのは「ポイ活」で45.7%を占め、次いで「事務作業」が24.6%となりました。この実利的な動機が過半数を占める一方で、「企業とのコミュニケーション」は次に位置しています。この結果から、多くのモニターがアンケートを報酬を得るための「労働」や決められた項目を淡々と入力する「事務作業」と捉えていることが分かります。

アンケート協力の動機

(3)アンケート体験は「良くなった」と「悪くなった」で二極化

全体で見ると体験の変化は均衡していますが、内訳を見ると明確な二極化が見られます。

  • 「ポイ活・作業層」:体験が悪化したと回答する傾向があり、「印象はかなり悪くなった」という意見も存在します。

  • 「企業とのコミュニケーション層」:体験が向上したと回答する割合が圧倒的に高く、「印象がかなり良くなった」という意見が特徴的でした。

この結果は、アンケートに対する意識が体験の評価に直結していることを示唆しています。

アンケート体験の二極化

(4)体験を良くしているのは「報酬」ではなく3つの心理スイッチ

10 Inc.が”Nullo AI Studio”で実施した定性AI分析により、体験を向上させる要因として報酬以外の3つの心理スイッチが明らかになりました。

  1. 【実感と誇り】自分の声が「形」になった瞬間の喜び

    • 「実際自分の意見を言ったものが商品化されて世の中に出た時。例え自分の意見が通ってなかったとしても、その商品に関われたことに誇りを持てる。親近感がとても湧く」(40代・女性)

    • 自分の回答が現実世界に影響を与えたと知ることで、「役に立った」という期待が「誇り」へと変わる瞬間が生まれます。

  2. 【共感と責任】企業の「本気」を感じた時のスイッチ

    • 「企業が本気で私達の声を聞きたいのだなと思うときはかなり真剣になって取り組みます。質問の内容により、回答者の意図や傾向を知りたがっているんだなと思えるときに、『ちゃんとこたえなきゃ』 と思います」(40代・女性)

    • 調査票から企業の熱意を感じ取り、それに応えようとする責任感が生まれています。これは、単なる設問と回答ではなく、熱意と誠意のキャッチボールと言えるでしょう。

  3. 【貢献と参画】社会やブランドを良くしたいという願い

    • 「やはり自分の意見を伝えて、世の中を良くしていくのがベースで、ポイント以外の物を得られるのがアンケートだなとひしひし感じています」(30代・女性)

    • 「仕事関係のアンケート以外では消費者として、ブランドに自分の考えを伝えて、より良い製品作りに役立ててほしいと考えます」(60代・女性)

    • 自分の回答が製品やサービスを通じて社会に還元され、生活がより良くなることを信じる高い視座が、参加意欲を掻き立てています。ポイントはあくまで「おまけ」に過ぎないのかもしれません。

(5)リサーチ業界が抱える構造的な課題

「ポイ活・作業層」の意見からは、リサーチ業界が抱える構造的な課題が浮き彫りになりました。

  1. 「コスパ・タイパ」の崩壊(割に合わない労働)

    • 「一生懸命答えて報酬が1ポイントだったりするとモチベーションが下がる」(40代・女性)

    • 「内容の濃さや質問数やかかる時間に比べて、どんどんポイントとの釣り合いが取れなくなってきている。情報を求めてる企業と情報の安価さにギャップを感じる」(30代・男性)

  2. 「回答者への配慮」の欠如(UI/UXの劣化)

    • 「1つのアンケートで小さい表のような枠の中にポチポチ該当する項目を押していく。スマホだとスクロールすると項目が消えてしまい、何を答えるんだっけ?となる。とっても利用しづらい」(50代・女性)

    • 「主語が明確でなく、回答者自身の事なのか家族全体での事なのか分からない。回答フォームや内容の質が悪くなった」(50代・女性)

  3. 「理不尽な仕様」への不信感(人間扱いされていない感覚)

    • 「生年月日や性別など基本的なことをさんざん聞いた上で、『あなたはこのアンケートの対象者ではありません』と表示され、何ももらえないパターン」(50代・男性)

    • 「同じような事を聞いてきたり、引っかけ問題で回答者側を試したり。これ、真剣に答えたけど本当に欲しい情報なのかな、役に立つのかなと疑ってしまう」(30代・男性)

これらの意見は、回答者が単なるデータ収集の道具として扱われていると感じている実態を浮き彫りにしています。

🤝 持続可能なリサーチの鍵は「価値共創体験」にあり

今回の調査結果は、リサーチの持続可能性が「回答負荷を減らすこと」や「不正を排除すること」だけでは成立しないことを強く示唆しています。10 Inc.は、生活者が「社会参画」や「価値共創」を実感できる体験設計こそが、質の高いデータと長期的な協力関係を生む鍵であると考えています。

企業がリサーチを行う際には、単に情報を収集するだけでなく、回答者が自身の意見が社会や製品に影響を与えるという「実感と誇り」を感じられるような仕組みづくりが重要です。また、企業の「本気」を伝え、回答者の「貢献と参画」の意識を引き出すコミュニケーション設計が求められます。

10 Inc.は、今後も生活者のインサイトを深く捉えるMROC調査を通じて、意思決定や価値創出につながる知見を発信していくとのことです。リサーチのあり方を見直し、生活者と共に価値を創造する「共創型リサーチ」への転換が、これからのリサーチ業界の発展には不可欠と言えるでしょう。

📖 調査概要

  • 調査主体:10 Inc.(自主調査)

  • 調査手法:オンラインコミュニティ調査(MROC)

  • 調査対象:全国の20〜69歳の男女289名

  • 調査期間:2026年1月7日〜1月13日

本調査結果を転載される場合は「10 Inc.調べ(https://10inc.co.jp/)」と併記してください。

🔗 関連情報

🏢 株式会社10(10 Inc.)について

10 Inc.は、リサーチを軸に、生活者と企業と伴走しながら価値を共創するハイブリッド型コンサルティングファームです。共創型リサーチ「MROC」は国内実績トップクラスを誇ります。リサーチ、ブランディング、マーケティング、デザインの専門家が連携し、インサイト発掘から戦略構築、施策までを一気通貫で支援しています。

10 Inc.ロゴ

  • 会社名:株式会社10 / 10 Inc.

  • 本社所在地:東京都中野区東中野1-30-15 スペースM B111

  • 代表者:代表取締役 佐藤 尊紀

  • 設立:2018年5月14日

  • URLhttps://10inc.co.jp/

【お問い合わせ先】
課題探索・構築をご検討の際は、ぜひお問い合わせください。
株式会社10 |10 Inc. :info@10inc.co.jp

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