万博来場者の居住地構造と来訪パターン
分析の結果、大阪・関西万博の来場者構成には興味深い特徴が見られました。延べ来場者数では近畿圏からの来場者が約7割を占める一方、ユニーク来場者数(重複を除いた実人数)で見ると、近畿圏の割合は約5割に低下し、関東圏や中部圏など広域からの参加が一定割合を占めていることが確認されました。これは、遠方からの来場者が万博を訪れる際に、より広範囲からの訪問者が含まれることを意味します。✈️

さらに、「万博IDなしチケット来場者」の居住地構成では、近畿圏の割合が33.7%まで低下し、関東圏(28.8%)や中部圏(16.2%)など、近畿圏外からの来場者の比率が顕著に上昇しました。これは、近畿圏外の来場者には、万博IDを持たない比較的ライトな層が多く含まれている可能性を示唆しています。


来場回数を見ると、近畿圏の来場者は複数回訪問するリピーターが多い傾向にありましたが、関東圏からの来場者は単発訪問が中心でした。このことから、地域によって来訪構造が異なり、イベントのプロモーション戦略を地域特性に合わせて調整することの重要性が浮き彫りになります。
万博が誘発した宿泊行動の活性化
全国の宿泊旅行者数が減少傾向にある中で、万博来場者層は例外的に宿泊を伴う旅行行動を活発化させていたことが明らかになりました。特に、万博開催期間中および閉幕後にかけて、近畿圏を中心に周辺地域への訪問や新規宿泊が増加する動きが確認されています。これは、万博が開催地周辺だけでなく、広域的な宿泊需要を創出した可能性を示唆しています。🏨
都道府県別の分析では、大阪府をはじめ、奈良県、兵庫県、滋賀県、香川県、和歌山県、京都府、静岡県など、多くの地域で新規宿泊者の増加が、宿泊を継続しなかった来訪者の減少を上回る傾向が見られました。これは、万博が新たな観光客を呼び込み、広域的な周遊行動を促した結果と考えられます。

地域事例:徳島県と滋賀県の取り組み
万博の波及効果を具体的に示す事例として、徳島県と滋賀県の取り組みが紹介されています。
徳島県:交通施策と連動した訪問拡大
徳島県は、万博会場での情報発信に加え、近畿発着の高速バス・フェリーを片道500円で利用できる「ワンコインキャンペーン」を実施しました。この施策により、万博来場者の徳島県への訪問割合が前年より上昇し、特に遠方居住者において「万博訪問後に徳島へ向かう」傾向が高まりました。県内では、従来の徳島市・鳴門市周辺だけでなく、三好市(祖谷のかずら橋)や美馬市(うだつの町並み)、剣山山頂など、内陸部の観光地への訪問も広がっています。🚌⛰️

滋賀県:地域資源の発信による来訪機会創出
滋賀県は、万博期間中にパビリオン出展や関連イベントを通じて、滋賀の自然、暮らし、文化を発信しました。特に甲賀市では、1970年大阪万博の「太陽の塔」との縁もあり、信楽焼などの伝統工芸やアートの展示、資材提供など、地域の魅力を積極的にアピールしました。この結果、滋賀県甲賀市にある「滋賀県立陶芸の森」への万博来場者の訪問が増加したことが確認されています。🎨

こうした地域資源を活用した取り組みが、万博来場者の滋賀県訪問のきっかけとなり、近畿周辺地域への周遊拡大に繋がった可能性が示唆されます。
今後の大規模イベントに向けた示唆
この研究結果は、今後の大規模な国際イベント開催に向けて重要な示唆を与えています。
- 地域特性に応じた戦略設計: 近隣地域ではリピーター獲得、遠方地域では初回訪問を契機とした周遊促進など、来訪構造に応じたターゲット戦略が有効であると考えられます。
- 従来の観光客への影響も考慮: 大規模イベント開催期間中は、従来の観光客がイベント開催地へシフトする可能性も考慮し、開催地から遠方の地域は、自地域への来訪需要への影響も踏まえた観光施策を検討することが求められます。
位置情報データを活用することで、公式統計やアンケート調査では捉えにくい旅行行動のダイナミズムを可視化できたことは、本研究の大きな特徴です。これらの知見は、地域の観光振興や経済活性化に向けた戦略立案に役立つことでしょう。💡
本研究の詳細は、以下の報告書で確認できます。ぜひご一読ください。
位置情報データの利用について
本分析で使用された位置情報データは、株式会社ブログウォッチャーが提携アプリをダウンロードし、位置情報取得に同意したユーザーの情報のみを利用しており、個人を特定できない形で統計処理されています。データの取得・活用についての詳細は、以下のリンクで確認できます。
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データの取得・活用についての詳細: https://www.blogwatcher.co.jp/terms/
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位置情報をONにするとどうなるの?: https://www.blogwatcher.co.jp/safety_of_locationinformation
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人流データを可視化する情報発信メディア「まちログ」: https://www.blogwatcher.co.jp/machilog